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歌声にのった少年

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紛争の絶えないパレスチナガザ地区で暮らすムハンマド少年。彼の夢は“スター歌手になって世界を変える”こと。仲良しの姉ヌールと二人の友だちとバンドを組み、拾ったガラクタで楽器を作り、街中で歌っていた。だが、ムハンマドの声が“最高”だと信じるヌールは、「カイロのオペラハウスに出る」というとんでもない目標を立てる。
資金稼ぎと練習を兼ねて結婚パーティで歌い、聴く者に言葉を失わせる美しい声で人々を魅了していくムハンマド。だが計画は予想もしない形で終わりを告げる。ヌールが重い病に倒れ、両親が治療費を用意できないまま亡くなってしまったのだ。姉との約束を守るため、ムハンマドはガザの壁を越えて、オーディション番組「アラブ・アイドル」に出場することを決意する──。(映画「歌声にのった少年」公式サイトより)


パラダイス・ナウアカデミー賞外国語部門賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞外国語映画賞ベルリン国際映画祭ヨーロピアンフィルム賞を受賞。続くオマールの壁で再びアカデミー賞外国語部門賞にノミネートされたハニ・アブ・アサド監督最新作です。

 

本作を観るにあたりパレスチナイスラエルについて色々調べました。私がさらっと話せるような歴史ではないので、是非ご自身で調べてみて下さい。

 

日本では想像もつかない戦場で暮らす子供たち。彼らが夢を持ち叶えることはとても困難なことだと思います。でも、そんな厳しい状況だからこそ、夢がなければ生きられないのではと感じました。姉ヌールがいなくなってから大人になったムハンマドは夢を諦めかけてヤサグレてました。しかし、そこから夢が目標に変わり進み出す彼の眼光の鋭さたるや。主演タウフィーク・バルホームさんの演技に言葉なくとも伝わる気迫。後述しますが、実際にガザに住む人々で撮影してるそうですね。そこにいる人が表現する演技は鬼気迫るものがありました。

 

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そして、ムハンマド夢に近づく程に大きくなるプレッシャーと、失敗したら…という恐怖心に押し潰されそうにになるクライマックス。観ているこっちの心臓に悪い…。しかし、自分にも身に覚えがあり過ぎて…想いが強い程失敗が怖くなるものです。思わず感涙。いや、国を背負った事なんて無いですが。人生で1度や2度挑戦をしたことのある人ならぐっと肩に力が入ると思います。コンテストのシーンでは本物の映像も写し出され、映画でよくある『本物見たら残念…』となるかと思いきや…なんと!本物のほうがイケm…。

(是非劇場でご確認ください!笑)

 

そして姉ヌール役のヒバ・アタッラーちゃんのかわいさ、というか皆ですが中東の女の子可愛すぎました。是非私の薄いパーツと交換して頂きたい。

 

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 (こちらはどーん。はい、かわいい。)


そんなことはさておき、観た後に、自分がまだまだぬるいと思わされ、体の奥からガツンと突き上げられるような、そして厳しいガザの現実とは対照的に爽やかな涙流れる映画でした。何か挑戦を迷ってたり、折れそうになってる人にとってもおすすめです。

 

 


そしてなにより凄いのは、現地ガザで、ガザの俳優で撮っているということ。パレスチナの現状を知ればそれが如何に困難な事かが分かります。ガザへの境界を超えるのはとても難しく、政府関係者や一部の信頼のあるジャーナリストしか立ち入りを許されない事が殆どだとか。そんな中に撮影隊が入って映画を撮るなんて!監督イスラエルの方なのに、どうやって撮れたのか…。凄すぎます。恐らく世界で初めてのガザを舞台にした国際映画となったそうです。現地の俳優にはムハンマドの幼少期役を演じたカイス・アタッラーくんを含め子供たちもいます。彼らはどんなキモチで撮影に参加したのでしょうか。そして、20年後30年後自分の映画を観たとき何を思い、ガザ地区はどうなっているのでしょうか。長く、終わりの見えない中東の紛争。未来ある才能の芽が戦果に散るような事のない、平和を祈ります。

 


また、本作や過去作パラダイス・ナウを観て、歴史を学び、知るということは重要であると感じました。歴史を、事実を知らないまま生きて行く事は、自分に責任を持っていない事になってしまうのではないかと。

 

パラダイス・ナウ

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うまく言えないけど、知ってる自分と知らない自分では、何かに迷ったり意見する時、違う答えを出してしまう事もあると思うのです。本作はもちろん、はシン・ゴジラ、など観た後に調べたくなったり人と話したくなる映画に出会えています。映画を観て、あー面白かった!っていうのも楽しいけれど、面白かったけど、それだけじゃないんだ!上手く言えない…感想を言うまでに1日かかっちゃうような、そんなときがあっても良いと思うのです。

サクセスストーリーだけじゃない、心にチクリと刺さるものがある本作。パラダイス・ナウはズシッと重い作品でしたが、今作はストーリーの感動がある分、その背景にある今も解決していない問題について考えさせられました。ハニ監督の狙い通り、酷さの中に描かれる美しさは、私の心に確実に小さな傷を残してゆきました。

 

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オマールの壁見損ねてる反省と早く観たい期待を込めて。

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是非、映画館で彼の歌声を聴いていただきたいと思います。

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福岡では11/19にKBCシネマにて公開です。